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漢方の心と先人の知恵

漢方の心と先人の知恵

 漢方医学には、人体は小さな宇宙であるという考えがあります。私たちの身体は天然自然のものであるという以外に、私たちの身体には宇宙の全ての要素が具わっている、という意味です。別な言い方をすれば、私たちをとりまく自然には、日の光りや風や雨があり、木や草は土に育ち、火によって燃やされて土に帰ります。我々の肉体も天然のものである以上、この範囲をこえることはできません。
 
 漢方では、病気も身体のこれらの要素の変動ととらえて、どうしたらそれを是正できるかという方法を考え出します。体がいつも冷えを自覚するか、つまり冷え症であるかどうかは、漢方にとっては大切な問題です。冬の寒い部屋は、暖房で温めなければ病気になってしまいます。
 
 体の冷えもおなじです。冷えのある人の病気には、まず体を温める漢方薬を処方し、寒さでしこった身体が温まるにつれて苦痛も緩和されるのです。体がほてって暑くてたまらないという人の病気には、逆に熱をさますような漢方薬がちゃんと用意されています。
 
 漢方医学には三千年の歴史があると言われています。そこには数多くの先人の知恵が蓄えられており、味わうべき言葉もまた沢山あります。
 
『南薫を求めんとすれば、必ずまず北牖(ほくゆう)をひらく』
 
 これは、私が最も好きな言葉です。漢方の奥義を示す言葉といってもよいでしょう。文中の南薫とは香しい南風のこと、北牖とは北の明かり取りの小窓のことです。
 
『温かな南風を部屋に取り入れるには、南向きの窓を大きく開けるだけでは充分ではない。そのときには北に面した小窓を少し開ければよいのだ』素晴らしく含蓄の深い言葉です。むしろ見事な人生智といえるでしょう。
 
 漢方の薬物には、現代医学の薬品のように強力なものはほとんどありません。前述の話題にもどれば、身体を温めて痛みを緩和させるというのはこの言葉にちょうど符合します。痛いからといってすぐ痛み止めを使ってはいけない、他のやり方でそれ以上の鎮痛を達成するという仕方こそ、漢方流のスマートな知恵のあらわれといえるでしょう。
 
 そういえば同じ意味の身近な言葉がありました。
 
『押してもだめなら、引いてみな』
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