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後藤艮山 ごとう こんざん

後藤艮山 ごとう こんざん

 後藤艮山(1659-1733)は患者に湯治をさせ、赤ガエルやカワウソ、鰻などを食して身を養うことをすすめた。『師説筆記』には、一回の肉食は十回の野菜や三服の薬よりも大益があるとまで極言している。薬では補益にならないとの主張は、約40年後に活躍した吉益東洞の、穀肉果菜こそ精を養うものとの説を想起させるに十分である。
 
 付言すれば、薬の本質を毒とする古典の記述を強調した東洞の言葉にも艮山に先例がある。同書には、「薬は毒物にして邪気に破れたときの備えである」とあり、それらの符合から東洞は艮山の考え方につよい示唆をうけていたことがうかがわれよう。
 
 『師説筆記』をよむと読者はたびたび艮山の先見性に驚かされることになる。脳卒中などで身体が不自由になったものは安居するだけではいけない、「人に助けられても、よく身体運動を行えば、天寿を全うできるものだ」とのくだりは、今日のリハビリテーションの思想そのものである。
 
 未病を治すのが後藤門の方針であって、病気になって治療するのは第二の手段にすぎない。役立つものは陰陽五行説でも取るが、害あるものはとらないとした態度は今日いうところの科学的な根拠に基づく医療の実践に通じている。
 
 艮山と門人の山脇東洋は解剖について語りあったとされているが、どのような文脈で言及されたのだろうか? 推測をたくましくすれば、それは臓腑とからめて病因を論ずる場面であったであろう。つまり病気治療にあたって病因を知らねばならず、それには曲直瀬道三流の五臓六腑では決定的に不足だとする立場である。
 
 『師説筆記』に一婦人が腹痛を訴えて艮山が腹診する場面がある。艮山が、「ここが痛むか」と触診しながら尋ねると、その婦人は「そこです」と答えるのである。そのときの艮山の脳裏には、人体の腹腔内臓器を詳細に写したオランダ渡りの図譜の一葉が鮮やかに思い起こされていたにちがいない。
 
 後藤艮山の門下には、山脇東洋や香川修徳のような独立独歩の気概が横溢した人物を輩出した。
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